今回の症例は、治療終了後〜18歳頃にかけて、あごの成長が続いたこと(晩期成長※)、8番(親知らず)が生えてきたことが重なり、歯並びに大きな変化が生じたため、再治療を行ったケースです。

※晩期成長とは…?

一般的には顎の成長が緩やかになる15歳以降でも、下顎の骨格(骨の長さや位置)が成長を続ける場合があります。


この患者さんは、9歳4か月のときに矯正治療を開始し、12歳2か月で治療を終了しました。(※治療期間は約2年10か月です)

治療終了後は、保定装置(歯並びを安定させる装置)をきちんと使用しており、しばらくの間は歯並びも安定していました。しかし12歳以降は、永久歯がほぼすべて生えそろっていても、あごの成長が続き、8番(親知らず)が動き始める時期でもあります。

本症例でも、こうした変化が歯列全体に影響しました。

「矯正治療が終わった=一生歯並びが変わらない」というわけではなく、特に成長期に矯正治療を行った場合、成長の変化や8番(親知らず)の影響によって、大人になってから歯並びが変わることがあることをこの症例を通じてご本人、親御さんにも知っていただけたらと思います。

【治療終了後〜再治療開始後の変化】

12歳〜18歳の時期は、永久歯が生え変わっているとはいえ、8番(親知らず)や顎の成長をし続ける時期です。

治療終了時は、親知らずを残しておいたほうが良い場合であっても、顎の成長によって、8番(親知らず)が動きはじめ、既存の歯並びに影響を及ぼしました。

 

【初診時の歯並び】9歳

初診時は、乳歯から永久歯へ生え変わる時期でした。
歯並びのガタガタ(特に出っ歯や八重歯)が気になるとのことでご相談をいただき、矯正治療を開始しました。

 

【治療終了時】12歳

小児矯正 終了時

12歳時点では、抜歯をせずに矯正治療を終了しました。
この時点では、上下の歯列は正しい位置で噛み合っています。しかし、成長過程であることを考慮し、親知らずやあごの成長の経過を見ていく方針としました。

【再治療開始時】18歳

顎の成長・親知らずによる再治療

あごの成長によって8番(親知らず)が動く余地ができたことで、整っていた歯並びやかみ合わせに変化が生じました。

その結果、前歯の歯並びの乱れや、かみ合わせのバランスが変わったため、再治療を行うことになりました。


まとめ

この症例は、
「保定装置を使っていても、成長や8番(親知らず)の影響で歯並びが変わることがある」
ということを分かりやすく示しています。

矯正治療後も、定期的にご来院いただき、早めに変化をチェックすることで負担の少ない対応が可能になります。

  • 治療後も定期的に歯並びをチェックすること

  • 8番(親知らず)の状態を確認すること

がとても大切です。

晩期成長の可能性があるか否かは親御さんでもわかりません。私たちと一緒に成人後まで定期的に噛み合わせを確認することが安定した歯並びを維持する鍵となります。

【関連記事】

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<初診時>

●主訴

口元が前に出ている、歯並びが悪い、八重歯が気になる

●診断名あるいは主な症状

上下顎前突

●年齢

9歳4ヶ月

●治療に用いた主な装置

セラミックブラケット

●抜歯部位

なし

●治療期間

約2年10ヶ月

●メンテナンス頻度

月1回

●治療費用(税込)

約1,100,000円

●治療を行う上での注意点(リスク・副作用)

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について(改訂)

日本矯正歯科専門医機関の規定により、当院では矯正治療を行う上で、リスクや副作用を明示しています。

  1. 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いですが個人差があります。
  2. 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性がありますが、その場合には改めて治療期間のスケジュール作成等をいたします。
  3. 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響することがあります。
  4. 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。程度によっては、虫歯治療を優先します。
  5. 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
  6. ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
  7. ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
  8. 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。その場合には装置の変更等を行います。
  9. 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
  10. 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
  11. 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
  12. 矯正装置を誤飲する可能性があります。
  13. 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
  14. 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。保定装置とは>>
  15. 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
  16. あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
  17. 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
  18. 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。