今回は、重度の上顎前突(出っ歯)と、深いかみ合わせがみられた小学生のお子さんの症例です。

【初診時】

9歳時点の歯並びです。

乳歯から永久歯への生え変わりが進んでいる段階でした。

前歯が永久歯に生え変わり、出っ歯が目立つようになっていました。また、下の歯が見えなくなるほどかみ合わせが深く、上下の歯が適切にかみ合っていないため、食べ物をかみにくい状態でした。

9歳は成長期にあるため、いきなりブラケット装置などで歯を動かすのではなく、成長過程や口腔周囲の筋肉の働きを考慮した矯正治療を検討できる時期です。そのため、年齢や成長段階も考慮しながら、治療方法を選択することが重要です。今回は、まずFKO(※)による治療を開始しました。

(※)FKO(アクチバトール)とは?

ドイツ語の「Funktionskieferorthopädie」の略で「エフ・カー・オー」と読みます。取り外し式の床矯正装置で、下顎の劣成長が原因で生じる上顎前突の治療などに用いられます。

【FKO(アクチバトール)終了】

10歳1ヶ月、FKO終了時の歯並びです。

下顎の位置関係や深いかみ合わせの改善を目的として、FKOを就寝時に装着していただきました。上記の写真からもわかるように、下顎の位置に変化がみられ、かみ合わせも改善してきていることがわかります。この時点ではFKOによる治療を終了し、次はマウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置による治療を開始しました。

【右下7番萌出を待つ】

12歳3ヶ月の歯並びです。

上顎と下顎の位置関係が変わり、深いかみ合わせが大きく改善したことがわかります。乳歯から永久歯への生え変わりも進み、永久歯の歯並びも整ってきました。

一方で、右下7番・右上7番・左上7番は萌出していない状態でした。

この時点で、マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置による治療を終了し、未萌出の右下7番の経過を観察することにしました。

横から見た様子です。お悩みの出っ歯・深いかみ合わせが改善していることがわかります。

【右下7番が萌出困難のため、歯肉を切開して萌出を誘導】

12歳7ヶ月の歯並びです。

経過観察の期間を経て右下7番が萌出しなかったため、このまま自然に萌出するのは難しいと判断し、歯肉切開を行い萌出を誘導しました。

奥歯の萌出スペースが十分でない場合などには、このように萌出が進みにくくなることがあります。

右下7番の萌出によって歯並びに影響が出ないよう、部分的にワイヤーを設置して適切な向きに歯が萌出するよう誘導しました。

【右下7番が萌出・上顎左右7番萌出待ち】

12歳9ヶ月時点の歯並びです。

右下7番が萌出し、下顎の歯並びは良好な状態を保つことができました。

しかし、上顎左右の7番については、未萌出の状態であるため、今後の成長や萌出の状況を確認しながら、必要に応じて対応を検討していく必要があります。

【今後の治療方針と注意点】

上顎左右の7番はまだ萌出していないため、今後も萌出の状況を注意深く確認していく必要があります。

また、親知らず(8番)の存在も確認されているため、今後の歯の萌出や成長の経過をみながら、次の治療を開始するタイミングについても慎重に判断していきます。

初診から3年9ヶ月が経過した時点では、歯並びに大きな影響はみられていません。ただし、今後の歯の萌出状況によっては、歯並びやかみ合わせが変化する可能性があります。


まとめ

一見すると歯並びがきれいに整ったように見えても、成長期には未萌出の歯や奥歯の萌出、親知らず(8番)の影響など、今後の歯並びやかみ合わせの変化を考慮する必要があります。

今回の症例でも、初診から3年9ヶ月が経過した時点では歯並びに大きな影響はみられていませんが、右上7番を含めた奥歯が今後どのように萌出するかによって、歯並びやかみ合わせが変化する可能性があります。

そのため、成長や歯の萌出状況を確認しながら、必要に応じて治療のタイミングや方針を検討していくことが重要です。


<初診時>

●主訴

出っ歯で下の歯が見えないくらい深いかみ合わせである、将来の歯並びが心配。

●診断名あるいは主な症状

重度の上顎前突

●年齢

9歳

●治療に用いた主な装置

マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置、FKO(アクチバトール)

●抜歯部位

なし

●治療期間

約5年10ヶ月

●メンテナンス頻度

月1回

●治療費用(税込)

約1,100,000円