拡大治療とは？
すべてのケースに適する治療方法ではありません
拡大治療は、適切な場合には効果的な方法ですが、すべてのケースに適しているわけではありません。症状や治療の目的によるため、歯科医師の診断により決定します。
ここでは、拡大治療が有効な場合と、注意が必要な場合について説明します。
拡大治療に使用する矯正装置：拡大床
Check拡大治療が有効な場合
- 抜歯を避けたい場合
- スペース不足が軽度な場合、歯列の幅を広げることで、抜歯せずに歯を整えることができます。
- 成長期の子ども
- 特に上顎では、正中口蓋縫合を拡大することができるため、顎の発育が促進される場合があります。
- 軽度の歯並びの乱れ
- 軽い歯の重なりやすき間を矯正するために、拡大治療が適用されることがあります。
拡大治療に関する質問
上顎は正中口蓋縫合があるから拡大が出来ることは理解できます。
しかし、下顎はどうやって拡大するのでしょうか？
下顎の拡大は上顎に比べて困難ですが、成長期の子どもであれば軽度の拡大は可能です。成人の場合は外科的手術や他の補助的な手段が必要となることが多いです。
矯正歯科医とよく相談し、自分に適した治療法を選ぶことが大切です。
上顎は「正中口蓋縫合」があるため、特に成長期の子どもではこの部分を拡大して歯列を広げることが比較的容易です。
一方で、下顎にはそのような縫合が存在しないため、拡大治療はより複雑です。
下顎の拡大方法
下顎の拡大にはいくつかのアプローチがありますが、上顎のような自然な骨の成長促進は難しいため、以下の方法が一般的に用いられます。
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①歯の傾斜を利用した拡大
下顎の歯を外側に傾けることで、スペースを広げて歯列を整える方法です。骨自体を拡大するわけではありませんが、歯を正しい位置に整えるのに役立つことがあります。
ただし、歯が過度に傾斜すると、歯根にストレスがかかる可能性があり、安定性の問題が生じることがあります。 -
②コルチコトミー（部分的な骨切り術）
成長が終了した成人では、歯槽骨（歯を支える骨）に小さな切開を加え、その後に歯列拡大装置を用いて骨をリモデリングさせる治療法です。骨がリモデリングされ、歯を広げるスペースを作ります。
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③下顎骨切り術（外科的な拡大）
極端な症例や、歯列を広げるために通常の拡大治療では不十分な場合に、外科的に下顎骨を切り、広げる方法です。これは主に成人のケースで行われる、より侵襲的な治療です。
拡大治療を行った場合、全て非抜歯で治療できるのでしょうか？
必ずしもそうではありません。拡大治療は、場合によって歯を抜かずに矯正できる選択肢として効果的ですが、全てのケースで適用できるわけではありません。
非抜歯で治療できる条件
- スペース不足が軽度の場合
- 歯列の幅を広げることで、歯が正しく並ぶためのスペースを作ることが可能です。特に、成長期の子どもでは上顎を拡大することでスペースを確保できる場合があります。
- 顎の成長を利用できる場合
- 特に若年者で、成長を利用して顎の拡大が期待できるケースでは、非抜歯の治療が可能です。
非抜歯で治療できない条件
- スペース不足が著しい場合
- 顎のサイズに対して歯が大きすぎる、あるいは歯が多すぎる場合には、拡大だけでスペースを確保するのが難しく、抜歯が必要になることがあります。
- 成人患者
- 成長が完了している成人では、顎の骨がすでに固まっているため、拡大治療だけではスペースが足りないことがあります。成人のケースでは、骨自体を拡大するのが難しいため、抜歯が推奨されることが多いです。
- 顔や口元の審美性に影響がある場合
- 無理に拡大することで、口元のバランスが崩れる可能性がある場合には、抜歯が適切と判断されることがあります。
歯列矯正における上顎拡大量の上限は？
歯列矯正において、上顎の拡大量には患者の年齢、骨の成長具合、歯列の状態などによって上限があります。上顎拡大は、骨の発育や歯並びを改善するための手法ですが、過度な拡大はリスクを伴うため、通常は以下の範囲を考慮します。
- 成長期の子ども（特に思春期前）
- 成長期の子どもでは、上顎骨がまだ柔軟で適応しやすいため、比較的広範囲な拡大が可能です。一般的には、最大で5〜7mm程度の拡大が可能とされていますが、それ以上の拡大が必要な場合は、歯科医師が慎重に判断します。
- 成人
- 成人の場合、上顎骨の成長がほぼ完了しており、骨の柔軟性が低くなるため、上顎拡大は制限されます。歯だけを動かす歯槽性拡大では約2〜3mm程度が上限とされることが多いです。必要に応じて、外科的な介入（例えば外科的上顎拡大）を行うことで、より大きな拡大が可能になる場合もあります。
- 外科的上顎拡大（SARPE: 外科的支援による急速上顎拡大）
- 成人で上顎の大幅な拡大が必要な場合、外科的な手法が用いられます。これにより5〜10mm以上の拡大も可能です。ただし、手術を伴うためリスクや回復期間が考慮されます。
上顎の拡大量は個別の症例に応じて異なるため、矯正歯科医と相談し、最適な治療計画を立てることが重要です。
注意が必要な場合
以下のケースでは拡大治療が
有効ではない場合があります
- 成人の患者
- 成長が完了した成人では、顎の骨の柔軟性が低下しているため、上顎や下顎の拡大は難しく、外科的介入が必要な場合があります。
- 過度の拡大
- 歯や顎に無理な力を加えすぎると、後に歯並びが戻ってしまう可能性や、歯茎や歯槽骨に悪影響を与えることがあります。
- 再発のリスク
- 拡大治療の後は、保定装置（リテーナー）での長期間の維持が必要です。
適切に保定をしないと、治療前の状態に戻る可能性があります。
まとめ
まとめ拡大治療は、個々の症例に応じて効果的な手法となる場合もありますが、すべてに適しているわけではありません。
矯正歯科医が、患者の顎や歯の状態を詳細に評価し、最適な治療計画を立てることはもちろんですが、患者様ご自身でも自分で情報を正しく見極めることが重要です。